中1のHさんを初めて指導したのは、ある年の11月。2学期の中間テストが終わり、まもなく期末テストというタイミングだった。

科目は数学。計算が苦手だとは聞いていたが、正負の数のルールがまったく分かっていなかった。

(+7)+(+3)=+10

これはクリア。

マイナスの数はどうだろう。中学生になって初めて習った概念だ。

(+7)+(-3)=+4

これもできた。

次、これはどうだろう。

(-3)+(+7)=?

できない。

なぜだろう、実はひとつ前の式と答えは同じで、順番が入れ替わっているだけなのだが、マイナスの数に惑わされてしまった。

さらに

(-3)+(-7)=?

になると、ますます分からず、+4だとか+3だとか答えたりする。

しかも、数問解くのに他の子の2倍の時間がかかっている。

ゆっくり、じっくり考え、確実に間違える。かなりの強敵。

でも本人は理解したいと救いを求めている。助けないわけにはいかない。

この正負の数は中1の1学期に学校で習っている。学校では、分かっていることを前提に授業が進む。

2学期の期末テストの範囲は、方程式の文章題や比例のグラフなどだ。

しかし、計算問題が分からないまま、ほったらかしにすることはできない。

Hさんには毎週、計算問題の宿題を出した。答え合わせをして、間違った問題はすべて頭の中から消し去り、解説に書いてある通りノートに書き写す。省略してはダメ。解説を書き写しても分からなければ、塾に聞きに来る。

この繰り返しを続け、中2になるころには間違いがなくなった。長い道のりだった。

問題を解くのも、覚えるのも、他の子の2倍の時間がかかるHさん。コツコツと継続することで、そのハンディを乗り越えて、未来が開けた。

Hさんは今、第一志望の高校に合格し、楽しい高校生活を送っている。

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